建築家隈研吾さんの作品「国立競技場」を工務店の建築士が分析してみた
諏訪地域、松本地域、伊那地域の工務店の池原です
日本で一番の競技場だと、私は思いましたよ。
国立競技場。
5年前の東京オリンピックに合わせて建て替えられたこの競技場ですが、実際に訪れてその素晴らしさを肌で感じました。
「こんなに素晴らしいなら、この競技場でオリンピックを見たかったなあ」と、しみじみ思いましたね。
イベントへの参加は無駄使いなのか
イベントなどに費用を払って見に行くことについて、以前は「無駄遣いなのでは」と思うこともありました。費用をかけるなら物や形に残るものが良いと考えていたんです。
でも、そうではないんですよね。参加することへの意欲や、何を感じ、何を得るのかを考えるようになってからは、決して無駄だとは思わなくなりました。
単なる「癒し」や「目の肥やし」として訪れるだけなら、確かにイベントへの費用は無駄遣いと言えるかもしれません(笑)。
でも、見て感じて、それをこれからの自分に活かすことができれば、それは「自分への投資」につながるからです。
建築家隈研吾さんの作品「国立競技場」を工務店建築士が分析してみた
国立競技場。そう、建築家隈研吾さんの作品。『杜のスタジアム』として 自然との調和をテーマに建て替えられた国立競技場。
木材と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造は、一般的によく見られる鉄筋コンクリート造とは明らかに異なります。
そのデザインから感じられるのは、ローマの石造り「コロッセオ」のような歴史的競技場とは全く違う印象。硬質で荘厳な雰囲気ではなく、どこか柔らかく、ソフトな温かみを感じる造りになっています。
外観には三層の平たい屋根が重なり、その間に木々が植え込まれています。このデザインが、自然との一体感を見事に表現しています。
スタジアム周辺はものすごい人でごった返し、全体の写真を撮ることはできませんでしたが、この角度からでも木材を多用した造りがしっかりと伝わってきます。
周辺環境や木々の植え込み位置には、スタジアムの見え方に対する巧みな工夫が隠されているように感じます。また、会場への動線が「下から上を見上げる」ような目線を意識して設計されている点も、デザインの意図を感じさせます。
スタジアム内では、陸上トラックがあるためにピッチが遠く感じられるのではないかと想像していましたが、実際にはそうではありませんでした。
客席の傾斜が絶妙で、ピッチとの距離感は近くはないものの、全体を見渡すことができ、とても見やすい設計だと感じました。(ちなみに、私は2層目の前から2列目に座っていました。)
(写真は3層目の上段から)
ピッチに目を奪われがちですが、陸上トラックも隅々までよく見渡せる設計です。さすが、日本を代表する競技場だと感じました。
国立競技場の収容人数は、茅野市の人口とほぼ同じ規模!
収容人数は54,224人。これは地方の市、たとえば茅野市の人口(55,304人)とほぼ同じ規模。茅野市民全員が収容できるかもしれないと思うと、その規模の大きさに驚かされますね。
屋根の構造も鉄と木が組み合わされていて、その工法が一目で分かる素晴らしいデザインです。
この日、48,000人もの大観衆の声が国立競技場に響き渡り、最高の夜を演出していました。