諏訪・松本の工務店の社長ブログ|家族物語843

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手が動かない。PCに慣れきった私の脳へ、伊礼先生がくれた激薬。

諏訪地域、松本地域、伊那地域の工務店の池原です

 

「図面を描くのは、野球の素振りと同じだ」

建築の世界に身を置く人間として、この言葉の重みを今、痛烈に噛み締めています。

脳裏でプラン(構想)を巡らせ、それを1枚の図面に落とし込んでいく。
これは、誰かにコツを教わったからといって、すぐにできるものではありません。
「想像力」や「空間を読み解く力」は、人に教えられるものではないからです。

だからこそ、毎日バットを振るように、繰り返し、繰り返し、図面に向き合うしかない。

しかし、ただ空を切るだけの素振りでは意味がありません。
時には実際にボールを打ち返し、手応えを確かめる必要がある。
図面で言えば、頭の中の妄想を「実際に白紙に描き出すこと」が、
まさにバッティングにあたります。

手描きであれば、鉛筆を握り、定規を滑らせ、一心不乱に描き込んでいく。
とにかく手を動かし続けることでしか、スピードも、図面の正確性も上がっていきません。
しかも、それは平面図ばかりではないのです。時には、予測不能な変化球を打ち返すように、
立面図や断面図、お庭の計画までをも同時に描き切らなければならない。

「とにかく、描きまくること」

日本の住宅デザインの第一人者である伊礼智先生は、そうおっしゃいます。

しかしーー。 恥ずかしながら、PC(CAD)での図面作成にどっぷりと慣れてしまっている今、
久々に自らの「手」を動かして図面を描こうとしたとき、私は激しい戸惑いに襲われました。

PCなら、間違えてもクリック一つで簡単にやり直せる。
けれど手描きは違います。間違えれば消しゴムで消し、
また引き直す。そんなことを繰り返していては、時間はあっという間に溶けていく。

それならば、下書きの線を引く前の「作図の時点」で、
ほぼ迷いのないところまでプランを完璧に詰めておく必要があります。
しかし、普段PCの画面上でカーソルを動かしながら「あれでもない、これでもない」
と思考する癖がついてしまっている私にとって、
白紙を前に最初の一線を決めるまでの時間は、あまりにも長すぎました。

今回、私に課されたのは「3時間半で1軒の図面を仕上げる」という過酷な課題。

途中、仕事の電話で15分ほど席を外したとはいえ、
構想を練るのにも、下絵から完成図へ向けてペンを走らせるのにも、
明らかに「迷い」のせいで出遅れてしまいました。

かつて建築士の試験勉強で培った、スピード勝負の図面作成には自信があったはず。
なのに、手描きで早く描き上げるコツは脳で分かっているのに、指先が思うように動かない。

「くそっ、手が追いつかない……」

まさに、日々の素振り不足が、この白紙の上に残酷なほど露わになっていたのです。

もう一つ、私を戸惑わせたものがあります。
それは、伊礼先生から学び、頭では理解していたはずの「心地よい居場所の思想」や「美しい空間の定石」でした。

普段、実務としての図面ばかりを追いかけている日常の脳から、
一歩踏み込んだ「豊かな暮らしの空間」へと脳をシフトさせたとき。 分かっているはずの思想を、
この目の前の図面の中にどう取り込み、どう決断していくべきか、
最後の最後まで決めかねてしまったのです。「戸惑った」と言うのが、一番正直な表現でしょう。

バットを振らなければ、感覚は鈍る。
PCの便利さに甘え、手描きの泥臭さを忘れていた自分に気づかされた、3時間半の死闘でした。

プロとして、まだまだ素振りが足りない。
諏訪、松本、伊那の地域で、私を信じて家づくりを託してくださるお客様に、
最高の「心地よさ」をお届けするために。

私は今日も、白紙に向かって鉛筆を握り直します。 まだまだ、泥臭く、素振りを続けます。

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