「回遊動線」という罠。その数歩に、いくら払いますか?
諏訪地域、松本地域、伊那地域の工務店の池原です
最近、家づくりで必ずと言っていいほど 要望に上がるのが「回遊動線」です。
行き止まりがなく、ぐるぐる回れる間取り。
確かに、使いやすい。 それは間違いありません。
私も設計をしながら、 「便利だろうな」と思うことは多々あります。
しかし、プロとして 冷静にお伝えしなければならない「裏側」があります。
■ その「通路」、もったいなくないですか?
回遊動線を実現しようとすると、 どうしても「通路」を確保しなければなりません。
本来なら、そこは「たっぷりとした収納」にできた場所かもしれない。
あるいは、そこを通路にするがゆえに、
キッチンや洗面所などの設備を配置するために
部屋全体の面積を大きくせざるを得ないケースが非常に多いのです。
「便利さ」を求めて回遊させた結果、 建物の面積が増え、建築コストが跳ね上がる。
これこそが、家づくりの「背伸び」の正体です。
■ 5歩、10歩の違いでしかありません。
あちらからも、こちらからも入れる。 確かにスムーズです。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。
回遊できない間取りだとしたら、
一体どれくらい余計に歩くことになるでしょうか。
おそらく、5歩。 多くても10歩程度ではないでしょうか。
室内の、たった10歩です。
その「10歩のショートカット」を手に入れるために、
面積を増やし、何十万円、時には百万円単位の 追加費用を払う価値が、本当にあるでしょうか。
■ 暮らしの「ゆとり」はどこにあるのか。
家の中をスイスイ歩ける便利さも、一つの価値です。
でも、10歩余計に歩くことを受け入れるだけで、
住宅ローンの負担が軽くなる。
その分、家族との外食を増やしたり、 趣味にお金を使えるようになる。
どちらが、毎日を「納得」して生きられるでしょうか。
私は、家の中を最短距離で動けることよりも、
家族の人生が「最短距離で幸せ」に向かうことの方が、 ずっと大切だと思うのです。
家づくりに、正解はありません。
でも、「その数歩にいくら払うのか」という視点は、 忘れないでいただきたい。
毎日納得のゆく人生を送るために。 今日も私たちは、等身大の家づくりを考えています。

